十七夜先輩とワタシ ワタシの名前はフラーゴラ。露令高校1年生だ。水泳部に所属している。今日も放課後、水泳部で練習に励んでいる。……けど思うようにタイムが伸びない。部長の十七夜(かなぎ)先輩が声をかけてくる。「フラーゴラ、やったな。タイムが0.8秒縮まってるじゃないか」「……こんなんじゃ駄目なんです」 ワタシが想いを馳せるのは部活見学会の時の十七夜先輩の姿だ。人魚のように自由に水を泳ぎ、きらきらと太陽の光を浴びてプールのはしごを登ってくる十七夜先輩。ワタシはその姿にすっかり夢中になり、その日のうちに入部を決めた。 だから、ワタシには動機があっても才能はなかったのだ。水泳キャップを取り、ワタシの量の多い髪が垂れ下がる。ぺたぺたとプールサイドを歩くワタシは...29Sep2020二次創作
イーリンさんが風邪を引く話「……あら、フラーゴラじゃない」「お師匠先生、声ガラガラだよ……」 珍しく憔悴しきったイーリン・ジョーンズを見て、フラーゴラは素直に心配する。「完全に風邪だわ……」「そっか……お大事にね……? 皆きっと心配するから……。元気なお師匠先生を見てると、皆幸せになるから……」「くす、相変わらずいい子ね……」 イーリンはふわふわをなでる。「お師匠先生……それワタシじゃなくて白いクッションなんだけど……」「え……」 するとイーリンはその場に倒れ込んでしまった。「お師匠先生ーーーーっっ……!!!」 イーリンが冷たい感触に目を覚ますと、ひたいには濡れたタオルが乗っていた。後頭部には水枕の感触。重すぎるほどの布団が何重にもかけられ、そして心配そうに...28Sep2020二次創作
メイドバニー1日体験会 鶏の手羽先にかぶり付く。油が良いのか香ばしさと鶏の肉汁が広がる。レモネードをごくごくと飲み干す。これも悪くない。爽やかな柑橘の香りが鼻腔を突く。パエリアを口に書き込む。魚介と米のマリアージュがなかなかイケる。適当に入った店だったがここは当たりだと思えた。「お客さん。いい食いっぷりだねぇ」「そう?」 店員に話しかけられたがアト・サインは素知らぬフリで食事に夢中になる。なにしろ2日は食べてなかったのだ。「じゃお代になるけど……」「あー……、持ってない」「は?」「僕無一文なんだよね」 10日かけて探索したダンジョンは丸坊主。探索のために使った交通費、装備、食料もろもろで手持ちの有り金はゼロ。ダンジョン攻略で何か金策が出来ると期待していた...28Sep2020二次創作
サンプル小説、「護衛刀 対 魔剣」「まあ、鉄心さんったら。くすくす」「いやあ。アイシャさんが美人だからですよ」 日差しも晴々とした昼間。鉄心と美女は馬車に揺られていた。馬車を引くのは従者。馬車は何の変哲もない普遍的な馬車だ。豪奢な馬車もあったが、それでは盗賊にいかにも襲ってくださいと言わんばかりの風貌だろう。和やかに談笑する柊鉄心と美女。鉄心はこの世の外から現れた旅人(ウォーカー)だ。元の世界では主に護衛任務を任されていて、こちらの混沌(ケイオス)でも同じく護衛を任された。今回の任務はこの美女──アイシャを守り切ること。「でも……鉄心さんが優しそうなかたでよかった……」 そう言うアイシャは怯えているようだった。「……」 鉄心の目にもアイシャが恐れていることが伝わって...12Sep2020小説サンプル